観音経と密教と師匠の教え

観音経を教わった時

私が先生に観音経を教わって20年以上経ちます。
今思えば殆ど毎晩通い、二十五番を頭から丁寧に教えて貰いました。

「妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五」このタイトル部分だけでも10日以上やって初めて「何とか形だけは出来た」と中身に入った記憶が有ります。
注意を受けた事は数知れず。
「声が出ていない！」「その雑な読み方はなんだ！」「意味を考えて読んでいるのか！」
「切ってはいけない所で切るな意味が通じない」「テンポが変わった」「テンポと強弱は別だ」「棒読みするな」「やる気が無いなら帰れ」等々・・・終いには、細い棒で悪ければ手の甲を「ピシャリ」・・どこが、という指摘もされなくなる始末。
結局、観音経の偈を空で言える様になった頃、(始めて1年位たって後)全てに何とかＯＫを貰えたと記憶しています。
「これで出来たと思うな」という言葉はついてましたが。
暇さえあれば観音経ばかり練習した1年だったと懐かしく思い出されました。
とんでもなく覚えの悪い生徒で先生も大変だったんだろうなぁ～と今になって初めて先生の苦労が感じられます。
お弟子さんというものの存在は師匠にならないとわからないものなんですね。
「師匠と弟子は一生。良くも悪くも一生だから忘れるな！」口やかましく言われ若かった私は、
「はいは～い、一生ですよね～」と「先生も何回も同じこというしぃ、、、先生そろそろ次教えて下さい。お願いします」と無茶を言い「バカたれ！出来るか～天狗が一匹」と怒鳴られ、「ヒドイせんせいだ」と文句ばかり言って叱られてばかりいたいた大バカ者の香月でした（涙）
その私が先生に似て来てると思った瞬間、「あーやっぱり似るんだ」教え方も似てるし、「先生の考え方そのままかも」当時どれだけ先生に甘えてばかりで自分で考えようともしていなかったのか（泣）

先生は叱りながら、私の成長をどれだけ待ちわびてくれていたのか・・・
「親の心子知らず」を地で行っていた事はもう、取り返しも付きません！
残念な事に私は今でも先生の足元にも及びません。でも、近づきたいとは思っています。

先生が私達におっしゃったこと
「密教では師匠から弟子に教えるのは全て口伝が基本、その師匠が教えた事がそのまま教えとなる。自分の最初の師は住職である父で次の師匠は高野山の寺院の師匠。父はここはこう読んでいたけれど、高野山の師匠はこう読んでいた。今日から教えるのは高野山の師匠のやり方で教えるから。でも、どちらが間違っているというのはなくそれが口伝での教え」
というものだと教えを受けました。
その時は、経本というマニュアルが有るし何が違うのか？あんまりピント来ていませんでした。

ずっと一人でやっていると自分なりの上げ方をやっているのではないか？と思い、
唱和の練習をたまにはしたくてYou Tubeで観音経をやっているサイトを見つけて、やってみました。
同じ宗派でも先生によって微妙な間の取り方や言い回しの違いが有ります。
頭の先生と唱の部分はお弟子さんだと思うのですがぴったり合っているので、これが「師匠の教え」なんだと改めて思いました。
確かに音符ではないので違いは出て当たり前だとは思っていましたが。
その時判らなくても後になってこの事だったんだと判る、年齢という智慧の成せる技ですね。
やっぱり密教って本当に不思議です。

お遍路で思う事

お遍路に行き様々な方のお経を聞いても調子は全く様々です。
お遍路の先達さんの般若心経や御真言の唱え方の調子も微妙に様々で、高野山◯◯派の◯◯の違いも有るのかも知れません？？？
私は自分の先生に教えられた通りでやっているのでそれしかできないのですが・・・
色んな調子のお経が有るのは密教ゆえ・・教えられた先生とそれを覚えた人、様々なドラマがそこに存在する事を思えばほろ苦くて温かい気分になります。
お大師様を慕い一生懸命お経を上げておられる方々の姿、その気持ちは純粋で美しくそれを札所では沢山見せて貰える事は至上の幸せです。
香月にとってこれもお遍路のありがたい所です。

数日前から思い出した様に数分の時間の空きを見つけて細切れながらも地蔵和讃を練習しています。
気長にやっていけばそのうち～というかなり甘い考えでは有りますが(笑)

お経は何度お唱えしても上手に出来ません。この調子では一生出来そうも有りません。
届いたと思った瞬間にはまた・・・でも止めようとも思いません。
自分とお経の戦いではなく、自分自身の心の葛藤の様な気がします。
そう言えば同じ様な事を篠栗のお遍路で、札所の若い副住職さんとお話させて貰った時おっしゃってたなぁ～と！！

今日は昔の事を懐かしく思い出しながら観音経を上げさせて貰いました。